日本経団連の御手洗富士夫会長は9月11日、全国銀行協会へ政治献金の再会を要請しました。それを受けて全銀協は10月19日正副会長会議で三菱UFJ、みずほ、三井住友などの3大メガバンクや地方銀行に献金の協力を呼びかけました。
会長行の三菱UFJフィナンシャルグループは同月23日、献金再開の検討を始め、年内に実施するとみとめられています。
さまざまなスキャンダルのなかで国民の強い批判を受けて経団連は1994年から政治献金を自粛。しかし2004 、「政治献金も企業の社会的責任」との理由で再開し、2005年には25億円を献金しました(このうち98%が自民党)が目標の40億円には及んでいません。そのため高収益を上げている現行に要請したのです。
銀行はもともと巨額な政治献金をしてきましたが,1998年、大手銀行へ公的資金注入以降、中止しました。(税金を受取ながらの献金はあまりのも不当なため)
全銀協も同年以降「政治献金は個別銀行が自主的にやるべきで、協会として対処しない」という立場でしたが、今回、この方針を変えた事実は重大です。
2006年9月の中間決算では6大グループの当期利益は1兆7000億円と、中間期では最高利益を更新。2006年3月期の6大グループの利益は3兆円を超えています。この巨額の利益をもたらした最大の原因は何でしょうか。それは不良債権処理にあります。
不良債権比率は2002年3月期は8%台でしたが、今回の中間決算では1.5%に下がっています。その結果、貸倒引当金が利益として戻ってきたのです。
公的資金の投入(6大グループのみで10兆円を超える)により、不良債権処理が急速に行われ、結果として大手銀行は巨額な利益をあげられるようになったのですが、ここの大きな問題があります。
第1に、巨額な利益をあげても、本来の銀行業務である貸出は伸びず、そのための業務純益は逆に前年より減少している。【不良債権処理の名目で取引先中小企業の貸し渋りや貸しはがし、優良企業にしかかさない選別融資を行い、倒産させることで利益を上げる体質となっている】
第2に、巨額の利益を上げているのにもかかわらず大手銀行は法人税を支払っていません。これは税務ルールとして繰越欠損金があり、利益がでても前期の赤字と相殺される仕組みがあるためです。特に2002年度の税制改正で、金融機関の不良債権処理支援の名目で繰越期間が5年から7年に延長されました。今後大手銀行が法人税を支払うのは平均して4年後以上になるとの見通しです。
いずれにせよ、政府は銀行に対して異常な過保護をしているのだからこそ、銀行はその見返りとして政治献金をせまらているといえるでしょう。
銀行の社会的責任とは(銀行法第1条第1項)
①信用秩序をまもる②預金者などの保護③円満な融資の実行です。この目的を実行して経済の発展に寄与するのです。
今の銀行は預金者にゼロ金利を押しつけ、多くの中小企業への融資は消極的です。
利益をあげても預金者に還元せず、中小企業への貸出もせず、法人税もおさめず、その上で政治献金を再開するなど、銀行への不信はいっそう高まるでしょう。
『12月18日付け 商工新聞』